シンデレラの王子は。
そういいながら受け取ってくれたの。
他の料理のところにも行ったけれど、全然食欲が沸かないから、豪華なバイキングでも、普通の料理でもアタシにとっては関係なかった。
気になるのは先生のこと。ついつい捜して、目で追ってしまう。
でも、先生の姿がない。
必死でキョロキョロと辺りを見回しても見えない。
ドンッ
何か大きなモノにぶつかってしまったようで、鈍い音がした。
「-----すいません」
「-----う、…神谷?」
背後からした、アタシが溺愛した人の声。
捜していたのは自分の方なのに、結婚式に行くって自分の意志で決めたのに、いざとなると振り向きたくない。声を聴きたくない。顔を見たくない。
きっと、さよならって言えなくなる。さよならどころか、好きと口にしてしまいそうで、不安と苦しさが心の中で渦を巻く。
「神谷だよね?」
空未は料理に夢中で、アタシと先生の再会なんて目もくれず、取り残されてしまったアタシ。こういう時、どうすればいいんだろう。このまま黙ってたら、シカトみたいだから、知らない人のフリでもするか?
「-----違いますよ」
見ないように見えないように顔を隠し、若干怪しい人だ。
「俺が見間違うはずない。」
一瞬でバレてしまった。