シンデレラの王子は。

それならイチかバチか、顔を上げてみる。
「来てくれたんだ。来てくれないかと思ってた。」
ヤバい……
思い出の写真がアタシの上から降ってくるみたいに、頭の中を巡る先生への想い。
上手く言葉に出来ないけど、とにかく力が入らないかんじ。
「-----本当は来ないつもりだった」
どんどん声が震えてしまって、視界までぼやけ始める。これ以上言葉を発したら、滴が落ちてしまう。
「どうした?具合いでも悪いのか」
アタシの異変に気付いたらしい。
周りの人はお酒が周り初めた頃らしく、騒ぎ始める人続出。
そんな中、アタシを会場の外の椅子に座らせる。本当はアタシ、具合いなんか悪くないのに。なんで今頃、そんなに優しくするの?
でも、こっちには好都合かもしれない。あんなに人がたくさんいて、騒がしい中でちゃんと“さよなら”なんて言えるわけがない。
「誰と来た?」
「空未」
「じゃ、呼んでくるから」
そして、その場からいなくなろうとする、先生に手を伸ばした。その手は楽々と届いてしまうのだ。
「どうした?」
「-----話があるの。。。」
言ってしまった。
話があるって、アタシは言えるの?さよなら出来るの?強くなれるの?
今にも溢れてしまいそう。

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