シンデレラの王子は。
「-----あの…先生のこと諦められなくて、ずっと好きで…」
この辺りだったかな、雨が降りだして前が見えなくなったのは。
「-----実は、ずっと羽海のこと好きだったけど、アイツがいたから振ったんだ。」
今、“羽海”って…
「俺は今でも羽海のこと、変わらずに好きだよ。」
今頃なんなの?好きなんて、簡単に言わないでよ。
「そういうのいらないっ」
嬉しいって思う前に、自分でブレーキを踏まなきゃダメだと解った。
先生は予想外のアタシの反応に驚きを隠せない様子。
「アタシ、ずっと先生に言えなかったことがあるの。
というより、言いたくなかったんだと思う」
「……」
興味深くアタシの話に耳を傾けてくる。
「-----先生はきっと、アタシの中の一生忘れられぬ人だよ。それでもいいから、ここでさよならしよう」
“さよなら”…言えた。やっと伝えられた。
今まで、“さよなら”を告げてしまったら、全部無かったことになりそうで、この恋が終わってしまうと思うと、恐くて言えなかった。
そこでアタシと先生の関係は一切無くなって、赤の他人になる。それが恐かったの。
「えっ、待てよ」
「待たない。これから、アタシと先生は、もう逢うことはないと思うから、本当にさよならだよ」