シンデレラの王子は。
アタシでも音鳴るんだ。
でも、やっぱり高橋くんみたいな音は鳴らないや。高橋くんは音と音の間隔がすごく短くて、力強い音を出すの。
「下手くそ」
「知ってるもん」
『ダンッ、ダンッ、』と音を奏でながら、高橋くんの近くへ行く。
かなり至近距離だけどパスして、
「シュート!!」
って笑顔で叫んだ。
目が合うと、はいはいって笑いながら軽々とシュートした。
「ナイスシュート♪」
なんか嬉しくなって、高橋くんとハイタッチ。
笑いあってから、もうそろそろ帰ろうかなと思い、出入口の方をチラ見すると、人影のようなモノが慌て暗闇に消えて行くのが見えた。多分、それはこちらを見ていたのだと思う。実はさっきから気になってはいたが、顔は見えなかった。
「じゃ、また明日~」
「じゃーな」
真っ直ぐ家に帰る。
さっきの人影、恐いなぁ。身震いする。
いつもと変わらない朝。
登校中に友達と会って、挨拶を交わす。これもいつもと変わらない。
でも……
「-----なにそれ…」
教室に入る。
アタシは何も言えなくて、気持ちを代弁してくれたのは空未だった。
スクバをアタシに押し付けて、黒板に向かい髪を乱しながら走っていく空未。
思いっきり黒板に拳を叩きつける。