シンデレラの王子は。
今のアタシの心情を解ってるのかなってくらい絶妙なタイミング。
もちろん返事は
『いきます』
すぐに帰ってくる君からの返事。
『じゃ、前に行った海で』
『はい』
そこでメールは終わった。
向かう方角をあっさりと変え、海へ。
目的地へ近づいていくにつれて、久し振りに嗅ぐ匂いが漂ってくる。
まだ陽は沈んでいない。
堤防を越えて砂浜に足を踏み入れる。
真っ先にアタシの瞳に映ったのは水平線に浮かぶ夕陽。綺麗だなって思った。眩しいなって思った。
なのに、なぜなの?涙が右目から溢れ落ちた。
足を止めて夕陽に照らされる。どんどん沈んでいく。次第に空が赤に近いオレンジ色になって、美しい景色を黙って見つめていた。少しずつ、心にポッカリ空いた穴が埋め尽くされていくようで、楽になっているのは確かだ。
砂浜に腰を下ろしてサラサラの砂を少し上から徐々に落とす。風に乗って舞っていく砂が儚くて少し哀しくなった。
一ノ瀬さんまだかなぁ。
今どこにいるのかなぁ。
携帯を両手で握りしめた。
ふいに右隣に誰かが座った。
「2番のりー♪」
少年のようなノリで顔を見なくても誰か解った。
「俺が呼んだのに待たせてごめん。殴っていーよ。」