シンデレラの王子は。
最後の部分をふざけて言いながら、頭をアタシに向けてきた。
コツッ
一ノ瀬さんが頭を上げる。
「ちょっとだけ待ったから、」
そう言ったら、吹き出すように笑われた。
「なんで笑うんですかー」
なんだか恥ずかしさがいっぱいになる。
「っはは、だって言うこと成すこと、いちいち可愛いからっ」
アタシ今、瞳孔思いっきり開いた。
か、か、か、かかっ“可愛い”なんて、言われてしまったぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!
顔から火噴きそう。さっきの恥ずかしさに上乗せされる。なんと言えばいいのか解らないこの感情。
アタシが一ノ瀬さんの方を向くと、一ノ瀬さんもアタシの顔を見ていた。バチッと目が合って一瞬でお互いに目線を逸らした。
一瞬だったけど、一ノ瀬さんの顔、赤っぽい色してた。オレンジの夕陽に照らされて。
さっきの言葉から胸が騒がしい。アタシ、どうしちゃった?
「-----羽海ちゃん、もしかして泣いた?」
「な、なんで解るんですか!?」
「泣いた痕、ついてる。」
「本当ですか、恥ずかしいなぁ」
しっかり拭ったつもりだったんだけどな。
「なんかあったら言って」
「ありがとうございます」
沈黙。
沈黙ほど緊張する時間はない。