シンデレラの王子は。

また目があったら失神するから隣の君の顔を窺うこともできない。かといって、アタシの方から沈黙を断つことも出来ない。
沈黙を破ったのは、やはり、一ノ瀬さんの方だった。
「-----あの、今日は話したいことがあって……」
コクッと頷く。
「俺、羽海ちゃんは憶えてるか解んないけど、前にも泣いてる子を海に拐ってきたことあって……気付いてくれないから自分で言っちゃうけど、アレ、俺なんだ。」
-----やっぱり、アノ時の“一ノ瀬琉葵”さんは、一ノ瀬さんと同一人物だった。
「ちょっと、気付いてました。」
「-----そっか。」
照れ臭そうに微笑む君に、胸がドクンと高鳴った。
夕陽は沈んでいく。
空がオレンジから紺色、紺色から黒に変色していく。
黒の中に点々とアタシ達を照らす星屑と三日月。
今日は天気が良かったから、空が綺麗。それだけじゃない
君と見る星空は、他のどんな快晴の日の空よりも綺麗に映るだろう。
海と一ノ瀬さんが、アタシを清い気持ちにさせてくれる。
「-----急なんだけど、俺と今度デート行かない?」
「えっ?!」
「いや、別に嫌ならいいんだけど…」
そんな言い方ずるい。
「いいですよ。」

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