シンデレラの王子は。
ふいにその音が聞こえなくなったと思うと、気持ちがいいくらい『シュッ』てボールがゴールをすり抜ける音がした。
次のドリブルの前に目を開くと、そこには茶髪で、バスケウェアを着こなして、筋肉付くとこはしっかりついて、でもスラッとしてて、身長は175くらいで、 とにかく……釘付けになるような姿の人が、アタシの瞳を掴んで離さなかった。
ドリブルしては、シュートの繰り返し。それだけでもドキドキして、目がキラキラして瞬きするなんて勿体なかった。ずっと観てたくなるの。かっこいいなぁ。
「いつまで、そーしてんの」
『シュッ』
アタシのこと気付いてた。というより、完全に邪魔者?
「邪魔でしたよね、ごめんなさい。」
シュートしたボールを2回ついたあとに、ボールを両手でがっしり掴んでこっちを向く。
「いや、風邪引くから。それにもう遅いし」
ボッッ。顔に火が点いてる。
「ホント、練習の邪魔してごめんなさい。」
頭が真っ白になって、ただぺこっと頭を下げてダッシュで家に帰った。
「変な人」
つい、可笑しくて笑っちまった。邪魔なんておもってねぇよ。俺は、あと少しやってから帰るか。
こんなにダッシュしたの、体育以外でやったの初めてかも。