シンデレラの王子は。
もう一度だけでいいから、キスして抱き締めてほしかった。アタシがいくら拒んでも…あの日観覧車の魔法に掛けてくれればよかったのに。
受験合格した日、先生になんか教えてもらわなくたって、合格したんだって、塾に嫌味言いに行こうと思ったら辞めちゃって居なくなってるんだもん。
……ずるいよ。アタシばっかりこんな苦しくさせて…酷いことして突き放して、耳元で甘い言葉囁いたと思ったら、拒まれたくらいでまた突き放して、今度は急にいなくなって。
アタシ、どうすればよかったの?
先生のこと拒むようになったの、先生のせいなんだよ?
このままじゃ、先生のことしか見れないままになる。
空未は帰り道、何かを悟ったらしく、ただ隣を歩いてくれた。
「空未、アタシの隣の席の人、陸って名前なんだ」
自分でも何を言い出したのかと思った。
「そっか。それで思い出しちゃったのか」
周りの街の音が何も聞こえなくて、聞こえるのは自分の声と空未の声だけ。
「もう、自分の気持ちに知らないフリ出来ないよ」
何言ってるの?
知らないフリ?
「羽海が思うままにすればいいんじゃない?無理すんのよくないし」
思うまま?
「……ねぇ。羽海、あれって…」