シンデレラの王子は。

それをされるのも、アタシ達の関係が壊れてから今日が初めてのことだったから、涙腺ゆるんで、よかったな、なんて先生が言うから潤んだ瞳から耐え兼ねて零れ落ちた滴。
女の涙に弱いなんて、よく言うけど、本当はそんなことなくて、男子は女子の涙を見たら萎えると聞いたことがあるから、泣きたくなんか無かったけど、無理。
場所を代えてカフェに行った。道端で泣かれたら先生が変な目で見られちゃうもんね。移動してる間に頑張って泣き止んで歩いてたけど、妙に離れた距離が、心の距離と比例してるみたいで。
「……元気?」
「意外と元気。」
苦手の沈黙。
「……あのっ」
お互いに気まずかった沈黙をハモりながら断ち切った。
「神谷から言って」
アタシのこと『神谷』って言った?いつもは『羽海』なのに。
「うん。……あのね、アタシ、先生のこと好きなの。
突き放されたって、無視されたって、酷いことされたって、それでも先生が好き。」
一瞬びっくりしたような表情浮かべてたよね、ちゃんとみてたんだから。
「それって……」
「アタシだって忘れようとしたよ。何度も何度も頭ん中から追い出そうとしたけど、無理」
また零れそうになる涙をぐっと堪えて言った。
「ごめん」
えっ?

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