シンデレラの王子は。
テンション上がってた。だってそれって、すごいことで、ELUCAの選手に選ばれるのは宝くじで3億当たるか、それ以上と言われてるくらい。けど、架嗄は浮かない顔。というか不機嫌モード。窓越しに空の色が、夜の暗さを一層増していた。
「あーーー!!!!!」
いきなり唸りだす架嗄に、バスの中だから静かにしろと背中を軽く叩いてみる。
すると架嗄は涙を一筋流していた。
「なんで…なんで…なんでいつも兄貴なんだよ。
俺のがどう考えたって練習いっぱいやってるし、朝4時に起きて走り込みだってしてるし、……」
架嗄は祐紗兄の真似したがってるとばっかり思ってたけど、なんだか違ったみたいで
「俺は兄貴に勝ちたいんだよ!!!」
「そっか」
さっきまでテンション上がってたアタシって哀れだったなーと反省しながら、いつもと違う架嗄を慰めたくなった。
そんなことしてる間に、目的地に着いた。バスからおりる時に
「祐紗兄より強くなりたいんだったら、死ぬまで頑張れっ」
振り返って架嗄にそういってやった。返事は当たり前のように『おぅ』だった。
バス停から歩いて3分のダンススタジオに行き、2時間のレッスンを終えた。