シンデレラの王子は。

目があった。真正面に居れば、誰だって目くらい合うか。ってか、たぶんわざとここに座ったし。
びっくりした眼差しをする彼は、水分補給を一旦中断し、口を開く。
「歩いてる!」
「歩きますよ。」
「じゃなくて、じゃなくて、もう大丈夫なのですか。」
「大丈夫。今日はありがとうね」
「もう少し大人しくしとけばよかったのに。」
「何それ」
アタシが口を尖らせると、嘘だしっ、と笑う。
彼は手に持っていたペットボトルとボールを交換し、シュート練習を始めた。
アタシはブランコをキー、キーといわせながら練習風景を見つめていた。
何度も何度も同じことを繰り返して、何が面白いんだろうと思う。それが練習というものだけど、同じ回数ドリブルして、シュートして、相手が居たらまだ違うだろうけど、1人で黙々とこなす姿はなぜかかっこよく映る。そういえば、架嗄もこうやって毎日練習してたっけ。それ見てた時も、同じこと考えてたな。
つまんねーなら帰れ、とか、自分が呼んだくせに理不尽なこと言われたっけ。でも、途中で帰ってきたことは一度もなかった。

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