シンデレラの王子は。

『ダンッ』てボールをつく音。
『シュッ』てリングに当たることなくシュートされる音。
『タッタッ』て走る音。
『キュッ』ていう体育館の床とシューズの音。
バスケやってる人なら分かると思うあの音。
それだけで、めちゃくちゃかっこいい。すごいドキドキする。だから、小さい頃、友達と遊びたい休日を、全部兄達のバスケに費やされてすごく嫌だったのに、嫌いにはなれなかった。
中学の時は、自分のことが忙しくなって、観に行けないことが多くなったから、生活のバランスが最初とりづらかった。
久し振りに昨日、バスケしてる人を観て、嬉しかったのかな。かっこいいと思った。ビビッてきた。
「ちょっと休憩」
30分程経った頃だろうか。ベンチに座ると思いきや、青いタオルで汗を拭い首にさげ、ペットボトルだけを持って、こちらに来るではないか。
「はなし」
それだけ、目の前で見下ろし言われ、はっとした。彼は、隣のブランコに座る。
「覚えてたの?」
ブランコを止め、彼の方を向いて言う。
「俺は約束を守る男だから」
真っ直ぐ前を見てる。
「かっこつけたでしょ。」
茶化してみた。
「つけてないから」
バレたか、という風に爽やかに笑う。
「で?」

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