シンデレラの王子は。

そう言えば、呼び出しだったっけね(笑)
「もしかして、神谷も呼び出し?」
「委員会です」
どっかの誰かと違って、アタシは呼び出しされるようなキャラじゃないんだよって言ってやりたかったけど、そこは大人だから我慢。
机の上の鞄に教科書を入れていたら、ペンケースを床に落としてしまった。
拾おう手を伸ばすと、りっくんまで右側から手を伸ばしていた。ペンケース上で手が重なり、右側の髪を耳に掛けながら、りっくんの方に顔を上げる。
「それ反則」
小さく言う。
えっ?意味が分からないけど、なんかドキドキする。
重なっていた手は離れ、その代わりに顔が迫る。
近いけど、ちょっと、何、これ、
先生以外の人と初めてキスした。普通のキスだけど、すごく顔が熱くて、脈が速くなった気がした。10秒位。
「一生言うつもりなかつたけど、好きな人、神谷だから」
そう言って、教室からもアタシの心からも嵐のように去っていった。
これは好きなのか?待てよ、嵐のように去ったと言うことは、『もうアタシの中にはいない=好きではない』ということなのか?
確かにキスされたときも、ドキドキしたし、火照ったりなんかしたけど、それだけだった。こんなモノだったっけ?

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