シンデレラの王子は。

こんな可哀想なアタシに気付いて欲しくて、助けて欲しかったからに違いない。心の奥で泣き叫んでるアタシがそういってたから絶対そうなの。
近くにいるだけでいいの。痛みや傷が少しだけ癒える気がしてる。
「あー、なんか今日やる気しねぇんだけど」
一人言か。
「おい、シカトか?」
ボールの音が消え、足音が隣に歩いてきた。
「ったく、お前がそんなんだから、俺のバスケ魂が眠ったじゃねぇか!!」
「…ごめん」
「っは?そこは『アタシのせいじゃない』とかなんとか言うとこだろっ!
今日のお前いつも以上に変」
怒られた。変とか言われた。確かにいつもとは違うだろうね。心も身体もボロボロだもの。
された事はあの時と同じでも、今回の方が断然ダメージが大きい。理由なんか分からなくてもいい。でも、まだ震える身体が、幻覚みたいなモノに怯えていることを物語る。まだ触られてるような気がしてくる。また、激痛が走る。
「…嫌だ、嫌、やめてよっ!!」
急に吐いた言葉がそんなことで、興奮したような口調で号泣し始めたから、大丈夫かよ、と肩を持って落ち着かせようとテンパりながらも必死だった。なのに、触らないで、と手を外されてしまった。

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