シンデレラの王子は。
かっこいいこと言うって、本当にかっこいいじゃん。。。
やっぱり、触れられた時にビクッとして、嫌と言ってしまったけど、そんなのお構いなしに前を向いて歩くの。すれ違う人に、すごく注目されて恥ずかしい。
「降ろしてくれませんか?恥ずかしいです」
「目的地に着いたらな」
上から思いっきり見下ろされて、アタシは少し上目遣いになった。別に計算とかじゃなく。
この大きな手に触れた憶えがある。初めて逢った人なのに、初めての気がしなくてあの人なのではないかと何回も思って、君のこと見上げてた。
冷たい海風、小波の音。
真っ暗な先が見えない向こうから。
「はい、着きました」
優しくアタシのことを降ろし、立たせてくれた。
「足元気をつけて、前に躓いた人いるから」
「…えっ?」
躓いた人って?
「あっ、なんでもないから今の忘れて!!」
焦ってそう告げるの。そうだよね、アタシのことな訳がない。大体、夜の海なんて足場が悪いから、躓く人はこの世にたくさんいるだろう。前の彼女のこととか思い出したんだろうな。
そう思うと、心が寂しくなる。寂しくなると、空いた隙間に我こそはと、先輩のことが割り込んでくるのだ。