シンデレラの王子は。
君のその笑顔が、アタシを虜にさせるから、また真っ暗な闇から助かることができたの。あの夜、アタシに魔法をかけた人と同じようにね。
「…あの、アドレス教えてもらってもいいですか」
自分でも、変なとこにスイッチ入ってしまったのが解った。アタシは緊張すると暴走する。
しかも、そんな唐突にアド聞くなんて難易度の高いことを試みてしまったものだ。恥ずかしくって、今すぐにでも弁解したかったけれど、そんなこと今更できなかった。
思った通り、少しびっくりしたような表情をしたけど、その後には全然いーよ、って赤外線通信してくれた。ケータイくっ付けてる時は、心臓の音が聴こえてしまわないかと心配なくらいドキドキしてた。
アタシがアドレスを送ったので、君は素早くメールを打って送ってくれたよね。
『一ノ瀬琉葵。一応、ELUCAの8番。よろしく』
たったそれだけでも、それが初めてのメール。すっごい大事な宝物みたいに、ケータイ握りしめて、その後は一緒にいろんな話をしたね。
好きな食べ物を聞かれたからパスタって答えたら、今度一緒に食べ行こって誘ってくれて、大人だなって思った。
そんなような話をたくさんして、時々笑わせてくれてたら、もう朝日が顔を出し始めていた。