恋愛談義!
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「――相変わらず、お嬢様は鬼ですね」
会社からうんと離れたバー『Guido Fawkes』のカウンター
私の隣で、アードベッグのスーパーノヴァ(アルコール度数60%のシングルモルトウィスキー)を顔色一つ変えず楽しみながら、くすり、と唇の端を持ち上げる男。
「御堂(みどう)。私はもうお嬢様じゃないから」
「私にとっては、お嬢様はずっとお嬢様ですよ」
御堂は母方の祖父が非常にお金持ちだったころに、家に出入りしていた骨董商の息子だ。
体つきはがっしりと大きく、清潔感のある黒髪短髪で、すっきりとした奥二重の瞳は大きく、眼光鋭い。
骨董商というよりも、どこかの組の切れ者若頭と言ったほうが似合う。
年は確か四十をいくつか超えたはずだけれど、スーツを着ても、紬を着ても、絵になる色男で
そして16歳だった私が「初めての男」として選んだ男でもあった。