恋愛談義!

右目から涙をこぼした記憶なんてない。


私は物心ついたときから決して泣かない女だった。



信じられないと思いつつ、指先で頬を伝って落ちた涙のあとをぬぐう。



「――なぁ」



どこか気遣う風な井上礼央の声色に、胸がざわつく。


やめてよ。


同情なんて虫唾が走る。



「――」



なのに、すぐにこの場から立ち去りたいのに、足が動かない。





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