…TRIANGLE…
纏わりつくような重い空気が少しずつ動き出す。風が出てきたんだ、これは絶対に降ってくるな。
「俺も一緒に待つよ」
「え、いーよ。悪いし、雨降るかもしれないよ」
通学カバンの中から折り畳み傘を出した。家にはまだ帰ってないんだろうけど、用意がいい。こういうところが、女なんだなーと思わされる。
「別に濡れたって気にしないから、男だし」
自転車を停めて。穂香の隣に座る。少し距離を置いた。
「男とか女とか関係ない。あっ! ほら、雨降ってきちゃった!」
「ほんとだ。隼斗の奴はやく来ないかな? 何やってるんだよ」
コンビニ前は、夜になるとタバコ吸いながらガラの悪い奴らもくる。こんな場所に、穂香一人置いとけない。
これが本音。
「ナツくん、優しい」
「友達だからな」
穂香は「そうだね」と言って、雨が降り出したばかりの真っ暗な空を見上げた。
コンクリが濡れて雨のにおいが充満する。
コンビニの自動ドアは、開いたり閉まったり忙しそうに働く。
穂香は口を閉ざした。沈黙の中、雨が静かに徐々に勢力をまして降りはじめた。