…TRIANGLE…
口の中が切れて、血の味がする。
「穂香は、おまえが他の女といるの知ってた。そっちの女がいいなら仕方ないけど……せめて穂香の気持ちに整理つくまで待ってやれなかったのかよ…………」
掴んでいた両手を離すと、隼斗は、ふざけんな! と俺に背を向けた。
「何も知らないで正義のヒーロー気取りか? 穂香も穂香だな、ナツに取り入るなんて」
「穂香は悪くないだろ! なんだよその言い方! 気にくわねー」
「こっちだって気にくわねーよ! ナツ、おまえさっきから穂香が好きだって言ってるようにしか聞こえないんだよ!」
「俺は…………」
隼斗は、倒れた自転車を起こしてカバンを掴むと唾を吐き出した。
「おまえたちの面倒みるの疲れた。俺、もう幼なじみごっこ辞めるから……」
「隼斗っ! なんだそれ!」
そのまま走り去る隼斗を追えなかった。悔しくてガードレールを思いきり蹴った。
鉄の反動で足がじんと痺れて、その場にうずくまる。
隼斗の野郎……何考えてんのか、全然わかんねーよ。