…TRIANGLE…
家庭科室を出て、急いで体育館に向かう。ったく、タイムロス。やべ、練習はじまってる。
試合前の独特の緊張感の中で、ぴんと張り詰めた空気がいつもより重い。
アップのランニング、走るたびに口の中の傷がズキズキ痛む。汗が流れてわずらわしい。アクエリアスを何杯飲んでも喉が乾く。
隣にいる隼斗とは、一言も口をきいてない。
汗で滑った手からボールを奪われる。それを必死に追いかける。
いつもは、これが楽しくて仕方ないのに……今日はボールが弾む音もバッシュが床と擦れてキュッとなる音も、なんだか味気ない。
「ナツ、やる気あんのかよ! 遅刻してきたくせに、ミスばっかすんなっ!」
顧問に怒鳴られて、腰を低く落とし、集中しろと頬を叩く。
隼斗がドリブルでさらりと俺を抜いて、スリーポイントを決めた。
あいつ……いつも通りだ…………動揺がない。
動揺してるのは俺だけで、隼斗と口がきけない煩わしさを感じてるのも俺だけなのかもしれない。