…TRIANGLE…

 車の排気ガスが蒸し暑い夜を余計に苛立たせる。


『行けないよ……』

「どうしてだよ?」


『お母さんが心配するから。最近、変質者が多いでしょ? だからだよ』


「じゃ、今から俺が穂香の家行くよ」


『……ナツくん、お願いわかってよ……』


「わかんねーよ! 三分で着くから待ってろ!」



 携帯を乱暴に切ると、元通りのポケットに押し込み、自転車のスタンドをつま先であげた。


 ジジジ……と最後の力を振り絞ってなく弱々しい蝉。


 わかんねーよ。


 穂香も隼斗も、わけわかんねー。



 

 

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