…TRIANGLE…
「穂香は、何も心配しなくていいから。それだけ言いに来た」
「うん……ナツくん、隼斗の話きいてくれてありがとうね。私もう大丈夫だから」
穂香が目を細めて、えへ、と笑った。
この笑顔が、昔っから好きだった。
どんな失敗しても、どんなに叱られても、穂香がこうやって健気に笑ってくれると俺の中のどんな傷や痛みもなくなって、これでよかった、そう思わせてくれる笑顔。
「隼斗と仲直りしてね、ナツくん。私も隼斗と幼なじみに戻るから……今すぐはちょっと無理かもしれないけどさ、でも戻れるよ。
隼斗は……最初から私のこと幼なじみとして大切におもってくれていただけみたいだし」
「そっかぁ?」
だけど、どこか釈然としないのは穂香がこんなにいい奴なのに、隼斗があんなことを言ったからだ。
穂香よりいい女なんていないだろ、それを振るなんてやっぱ隼斗は許せねぇ。
でも、穂香が幼なじみとしての俺たちを望んでるなら俺たちはそれに戻ってやらなきゃならない。
戻れるのか? それには隼斗の言葉を許さなきゃならなくて、隼斗の言葉を許すならそれを認めたことになる。
家の塀に隠れて、穂香の顔に影がさす。ちょうど穂香の背丈と同じ高さのブロック塀に穂香は寄りかかった。