…TRIANGLE…

 夜は涼しくなってきた、風がふくとティーシャツ一枚だと少し肌寒い。コンビニの前に、おでんののぼり旗が出ていて、それはさすがにまだちょっとはやいだろ、と思いながら大通りを駅に向かって自転車を走らせる。


 自転車のかごに突っ込んだカバンの中の参考書がガタガタと揺れる。この前は彼女が、うわー懐かしい、とめくっていたっけ。

 夏休みの間、俺は何回も彼女と会ってきた。

 マンションのオートロックの解除キーは教えてくれない。

 インターホンを鳴らす。


 スピーカーから聞こえてくる彼女の声。


『甘やかしすぎた。ごめん。君とは恋愛関係になれない』


 静かなホールで現実を突きつけられる。


「セフレって意味ですか?」


『そう、それだ』


「入れてください」


 自動ドアが開いて、カバンを肩からかけると何度も通った通路を歩く。


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