…TRIANGLE…
写真たての中の三人だけが笑顔だ。
「まあいいや、穂香のお母さんに心配かけたくないし。俺は帰るよ」
「隼斗、待てよ。お前、穂香に謝れ」
「謝るのはそっちだろ。浮気はお互い様みたいだしな!」
「穂香は浮気なんかしてねーよ! 自分と同じだと思うな!」
ナツくんの一言がこんなに痛いなんて……
隼斗は、ぎりっと奥歯を噛み締めると部屋から出て行く。
二人のやりとりに、足に根が生えたみたいに動けなくなる。
「穂香、隼斗と二人で何話してた? 浮気がどうとか、どうして否定しないんだよ! 言われっぱなしじゃ悔しいだろ? 穂香は何も悪くないんだよ!」
言葉も出ない……誤解とかなきゃ、何とかしなきゃ…………
でも、それってナツくんを好きだって言わなきゃならなくなる。
「なんで黙ってんだよ! もういい。俺とは話すことないのかよ……よくわかった」
違うのに…………
ナツくんも隼斗を追いかけて部屋を出ていく。取り残された部屋で動けない私は一人ぼっち。
お母さんがいれてくれた麦茶が三つ、綺麗な正三角形を描いてた。
どれか一つがズレてしまえば、途端に歪な三角形になる……トライアングルが、一人ぼっちの私とただ静かにそこに描かれていた。