…TRIANGLE…
家までゆっくりと自転車をこぎながら帰る。
腰に穂香がつかまっていた感触が残ってる。家についたら消えてなくなりそうなほど、ほんの少しの感触だ。
雨はひどくて全身ずぶ濡れになったけど、そうやって濡れながら、さっきの穂香の表情は何だったんだろうと思い出す。
穂香が女になってるんだ……昔から、友達としか思ってなかった穂香が女になってる……
「ただいまー」
「おかえり。弟」
部屋では、兄貴と兄貴の彼女が仲良く夕食の準備をしていた。
「ナツくん、ずぶ濡れじゃない! 今、タオル持ってくるね!」
「葵さん来てたんだ?」
「親が出かけるからって、お前の帰り待っててやったんだよ」
葵さんは、キャビンアテンダントでスタイルもよくて、めちゃくちゃ美人だ。航空管制官なんていう格好いい肩書きを持っている性格の悪い兄貴とは近々結婚することになっている。
なんで、兄貴みたいな俺様野郎と付き合っているのか不思議でしょうがないくらい素敵な人だ。