…TRIANGLE…
「すごい雨だよね。突然降ってきたもの。ナツくん、ご飯は?」
葵さんはタオルを広げて、俺の頭をゴシゴシ拭いてくれる。
母親や兄貴に同じことされたら、「うざい、子供扱いすんな!」って、手を払うけど葵さんにはできないし。
成すすべなく拭かれた。
「隼斗と食ってきた」
「なら、連絡しろよな! あー、腹減った。葵、だからこんな奴待たなくていいって言ったんだよ!」
冷蔵庫からカルピスを出して、氷を入れたグラスに注ぐ。
「おい。ナツ!」
顔だけが取り柄の、性格の悪い兄貴が怒鳴る。
「なんだよ? 聞こえてるよ」
「今夜、葵泊まるからな? そーいう事するから覗くなよ」
兄貴がニヤリと笑う。
「遼也!? バカ! 何言ってるのよ!」葵さんが顔を真っ赤にさせた。
「ふざけんな! 兄貴たちの覗くならエロ本見た方がマシだ!」
カルピス片手に、リビングの曇りガラスのドアを乱暴に閉めると階段を上がる。濡れた制服が気持ち悪い。
「葵がエロ本に負けるってのかよ! ナツ!」
「遼也! やめてよぉ」
彼女の悲鳴に近い声が聞こえた。兄貴の悪い癖だ。葵さんをからかって楽しんでる。
だけど、隼斗が言うように俺はただの邪魔者だった。