…TRIANGLE…
「優勝おめでとう! ナツ、超かっこよかった。会場で一番かっこよかった!」
「なあ、亜里沙。なんで今日穂香が来てないか知ってるか?」
亜里沙は、ムッとした表情で斜め下から俺を見上げる。
「聞いてよ、穂香ね。今日美咲と二人で買い物行ってるんだよ! 数量限定のブーツが発売になる日だからだってさ。酷いよね、幼なじみのナツと隼斗が優勝したのに、穂香は自分の買い物優先したんだよ。私、穂香がそんな子だと思わなかった」
「なんかの間違いだろ、穂香がそんな理由で試合に来ないわけない」
手を振り払うと、亜里沙は小走りで俺の隣に肩を並べて、今度は指を絡めてきた。
「ナツは、穂香のことなら何でもわかっちゃうんだね……」
「何でも、ってわけじゃねーよ」
逆にわからないことだらけだ。
なんであの夜、穂香は隼斗と二人で部屋にいたのかとか、本当はまだ隼斗を好きなんじゃないかとか……
それに悔しくて嫉妬しているこの俺の気持ちはなんなのか?
穂香については、説明できない感情に駆られることがある。
各駅停車の電車に乗って三人で海に行ったあの時に戻りたい。
隼斗がいて、穂香が真ん中に座って、穂香の鞄からお菓子が次々に出てくるあの時からやり直したい。