…TRIANGLE…
「全国大会とか、おまえは熱い青春おくってて羨ましいよ。俺なんて、高校生の時は女とヤることしか頭になかったからさ。
部活とか友情とかダセぇーって思ってた」
眉間に皺を寄せて息を吸い込んだ兄貴の口元で、煙草の先端が赤く燃える。ぱちぱち、と小さな音をたてて、すぐに火は見えなくなる。
「悪かったな、ダサくて」
「全然、ダサくないな。けっこういいよ。他人事だけどな。ま、俺の分も頑張れよ弟」
「兄貴だって、夢実現させて航空管制官になったし、好きな女見つけて結婚するだろ。何、オヤジ臭いこと言ってんだよ」
短くなった煙草を灰皿に押し付けると、オヤジ言うな、と吐き捨てて俺を睨みつける兄貴。
この兄貴に優しさなんか期待してないけど、基本的にいつも睨みつけられている俺。顔がこれだけ似てなかったら、本当の兄弟か疑ってたかもしれない。
「本当はパイロットになりたかったんだよ!」
「しらねーよ!」
気分を損ねた兄貴は、ピシャリと窓をしめるとカーテンを閉じた。
缶ジュースは、まだシュワシュワと音をたててる。俺は仕方ないから、それを自分の机の上に置いた。