…TRIANGLE…
「隼斗、ベンチには入って……おまえがいるのといないのじゃ全然違う」
「入るよ、当たり前」
「それから……」
「穂香に観客席にいて欲しいんだろ?」
穂香の話題は避けようとしてたのに、隼斗は自分から喋り続けた。
「おまえ、わがままだよな。でも俺は、もっとわがままだ。おまえに隠してたこと話すよ」
「隠してたこと? そんなもん、ずっと隠しとけば」
静かな病室。隣の部屋からわずかに聞こえるテレビの音が、余計にこの部屋が静かなことを教えてくれる。
「そういうわけにはいかない。俺は俺で次に進みたいからな」
「なんだよ……」
「俺さ、穂香と付き合ったのってナツと穂香に仲間外れにされるのが嫌だったのかもしれない。穂香もナツも大事だけど、なんかおまえ達ってくっつきそうな雰囲気あったから、俺焦って穂香に迫ったのかも。
だから、穂香はいくら待っても俺を受け入れてくれなかった……
あの夜、俺が穂香の部屋にいたのは自分の気持ち確かめたかっただけだ。俺が失いたくなかったのは、穂香じゃなくて三人でいる時間だったのかもな」
「な……んだよ、受け入れてくれないって、穂香はちゃんとおまえのこと好きだった」
「ナツには、わからない問題だ」
「そうやって俺には関係ない、二人の問題だって言うんだろ……」
だから、俺は穂香がまだ隼斗を好きなんじゃないかって思ったし、隼斗だって穂香を好きなんだと思った。
「ナツ、穂香が好きか? 幼なじみとしてじゃなくて、女として」