…TRIANGLE…

「なあ、隼斗。俺たちってさ……何も悪いことしてないよな?」

「してないな……多分。ただ今は空回りしてるだけだよ。俺もおまえも穂香も」


 ナツは足を投げ出したまま、押し黙る。午前中の電車はすいていて、制服姿の俺たちは目立ってる。

 こんな時間に高校生が海岸方面に向かう電車に乗っているなんて、普通ありえない。


 だけど、誰かが咎めてくれるわけもなく、俺たちは自由だ。



 学校という狭いコンクリートの箱の中に押し込まれてなきゃ自由なんだ。学校の外の時間はのんびり過ぎているように感じる。日差しが暖かくって、各駅停車に焦らされずに、ゆっくりと時間が過ぎていく。

 あと何分でチャイムが鳴るからとか、次の授業はなんだっけ? とか、そんなこと何も考えなくていい。


 亜理沙がどんな奴で、穂香がどんな酷いことされたのかなんて、外に出てしまえば関係ないんだ。


 そう穂香に言ってやろうと思った。



 あとは俺たちがついてるから……って。学校の外に出ても穂香には俺たちがいるからって……


 俺は穂香のこと傷つけて、俺と穂香はうまくいかなかったけど、幼なじみの三人なら全てがうまくいく気がする。








< 208 / 254 >

この作品をシェア

pagetop