…TRIANGLE…
お母さんの軽自動車の助手席に座りシートベルトをつける。
「穂香、足が汚れてるわ」
膝を指さされて、お母さんは自分のハンドバックの中からハンカチを取り出した。
「ああ、ほんとだ。今日ね裏庭の掃除係だったから汚れちゃったのかも」
明るい声を出すと、お母さんはくすくすと笑った。
「そう。でも、女の子なんだから身だしなみ気をつけてね。穂香がいつも掃除は一生懸命やる子なのは、お母さんも嬉しいけどね。先生に褒められるでしょう」
本当は、虐められて追いかけられて逃げた時に汚れたものなのに……お母さんは得意気に車を発進させた。
「受験大変だけど、頑張ってね。今頑張れば、後で絶対報われる時が来る。今は学歴なんて、あまり関係ないって言うけど、そういうこと言う人って結局いい大学出身の人で、自分は出身大学のおかげで出世したんじゃない、ってことが言いたいだけだもの。結局は、学歴社会なの。穂香は、やればできる子だもの。お母さん信じてるわ」
「お母さん……」
勝手なこと言わないで。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない……」
お母さんに悪気はない。お母さんは、私のために言ってくれてる。
「いってきます……」
「穂香、これ。お弁当作ったの。頑張ってね」