…TRIANGLE…
────卒業式は、綺麗な晴天で暖かい日だった。
今日で着ることのなくなる制服を袖を通しただけで泣けて、バスから見える景色を目に焼き付けた。白いタイルの廊下も、ひび割れたコンクリートの壁も、茶色い机も……全部全部焼き付けて、楽しかったことも、辛かったことも、嬉しかったことも、悲しかったことも、全部全部今の私の一部になる。
「穂香ー、体育館行くけど、行く?」
「ナツくん、隼斗! うん、行く! ちょっと待ってて」
ナツくんに、はやくしろよー、と言われて大きく頷いた。
「美咲、ごめん、先に行ってて私……」
「オッケー、お店の場所わかるよね? 先にはじめてるよー。よかったら、ナツくんと隼斗くんも連れて来てよ! みんな、大喜びするよ。それに元バスケ部のヤスくんたちも来るみたいだから」
「うん、わかった! ありがとうね」
桜のつぼみが今にも咲き出しそうな木の下を走って体育館に入る。
卒業式の後片付けは終わっていて、ナツくんがボールを投げて、それが綺麗にリングに吸い込まれていく。
絵になるかっこよさ、これも絶対に忘れたくないと思ったら、また泣けてきた。ハンカチ三枚使っちゃったのに……