…TRIANGLE…

────卒業式は、綺麗な晴天で暖かい日だった。


 今日で着ることのなくなる制服を袖を通しただけで泣けて、バスから見える景色を目に焼き付けた。白いタイルの廊下も、ひび割れたコンクリートの壁も、茶色い机も……全部全部焼き付けて、楽しかったことも、辛かったことも、嬉しかったことも、悲しかったことも、全部全部今の私の一部になる。



「穂香ー、体育館行くけど、行く?」


「ナツくん、隼斗! うん、行く! ちょっと待ってて」


 ナツくんに、はやくしろよー、と言われて大きく頷いた。


「美咲、ごめん、先に行ってて私……」


「オッケー、お店の場所わかるよね? 先にはじめてるよー。よかったら、ナツくんと隼斗くんも連れて来てよ! みんな、大喜びするよ。それに元バスケ部のヤスくんたちも来るみたいだから」


「うん、わかった! ありがとうね」




 桜のつぼみが今にも咲き出しそうな木の下を走って体育館に入る。

 卒業式の後片付けは終わっていて、ナツくんがボールを投げて、それが綺麗にリングに吸い込まれていく。



 絵になるかっこよさ、これも絶対に忘れたくないと思ったら、また泣けてきた。ハンカチ三枚使っちゃったのに……




 

< 251 / 254 >

この作品をシェア

pagetop