…TRIANGLE…

「穂香もバスケする?」


「私、もう忘れちゃったよー! 見るの専門」



 隼斗がくっと笑って、俺も、と言った。隼斗を傷つけるつもりはなかったんだけど、隼斗は怪我をしてから一度もバスケをしていない。

 
 ナツくんがまたポーンとボールを放った。


 磁石がついてるみたいに綺麗に吸い込まれているオレンジ色のボール。



「もう、ここでバスケできないのかぁ……」


 残念そうな声に我慢していた涙が一気に流れた。


「ほら、タオル」


「うん……」


 ナツくんにタオル貸してもらうと、隼斗がお腹を抱えて笑い出す。


「あははは! おまえらウケる! 青春コント
かよ!」

「うるせーな、笑うな馬鹿。人がしんみりしてんのに、なんだよ! 大体なぁ、隼斗が怪我したせいで引退がはやまったんだよ!」


「はあ? ふざけんな! 俺がいなくても優勝してやる、って言ったのはどこのどいつだ!」


「おまえ! ベンチのくせに、俺を出せ! て暴れて退場になっただろ!」 


「ナツが使えないからだ!」


「使えなくたって悔いは残ってねーんだよ! 全力で負けたんだから!」


「じゃ、いーじゃん。今更喧嘩売ってくるな」





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