…TRIANGLE…
「違うの……ナツくん。私も悪いの……」
「穂香は何も悪くないだろー。ガキの頃から、穂香が悪さしたことなんか一回もない」
「ナツくん……」
指の隙間から、穂香が泣き顔を覗かせる。
昔から泣き顔は、変わらないな。
涙を指で拭ってやると、穂香は肩をビクリとさせて俺を見つめた。
「穂香……」
その表情は、あの雨の夜にみせた表情と同じだ。
俺の知らない女の顔をする穂香。
俺の心臓を勝手に鷲掴みしてくる女の表情だ。
何だろう? この穂香の表情は。
こんなにも俺を掻き立てて、何かを伝えたそうにジッと見つめてくる。
「ナツくん、聞いてくれてありがとうね。隼斗にちゃんと話してみる……」
体が勝手に暴走しそうになる。
俺は今すごくすごく穂香を抱き締めてみたいと考えてる。
「ごめん……帰る」
「待て、穂香」
穂香の細い腕を強引に引っ張ると、バランスを崩した穂香が俺の腕の中に飛び込んできた。
隼斗は友達で、穂香は隼斗の彼女。
二人は、俺の幼なじみで、ずっと友達だ。
それが、変わることなんてないと信じてた。