…TRIANGLE…
「もう、大丈夫だよ。誰にやられた? 殴ってやるから、言えよ」
ナツくんが、ギュッと拳を握り締めた。
「え……わからないし、大丈夫。多分わざとじゃないと思うんだ」
気がついてしまったナツくんへの気持ちを押さえ込む。
綺麗な顔立ちに、仕草や話し方もカッコいい。それに、すごく優しいことを私は知ってる。
押さえなきゃ……こんな気持ちダメだ。
「そっか……それなら、次から気をつけろよ。穂香はのろまなんだからな。
はやく出て来い、手赤くなってる」
ドアを思い切り叩いたせいか赤く腫れた両手をナツくんに見られた。
私の手を持ち上げて顔を……顔が近い……!
「こっち来いよ。ほんと、世話が焼けるなぁ」
グイッと引っ張られ倉庫を出た。ナツくんに手を引かれてすぐ隣の体育館まで行くとバスケ部の部室に入った。
「座って」
「うん」
するとナツくんはスプレーを探して持ってきた。
「冷たいからな」
「うん……きゃー! 冷たい!」
「はははっ! すげぇ声。打ったとこに効くスプレーだから、すぐに腫れがひくよ」
ナツくんは笑いながら、私の手を離した。