メイド in Trouble!!!

ええ、厄日です。

―――――


「はー。でけーなこりゃ」

帰宅後、荷物をまとめてお勤め先の神宮寺家にたどり着いた私は、目の前にそびえる大豪邸を見上げてつぶやいた。

門をくぐると、そこにはキレイに手入れされた中庭。そこに、玄関へと続く小道が用意されている。
このスペースだけで梶原家、住めそうなんですけど。

敷地の広さに圧倒されながらも、おそるおそる玄関のチャイムをならす。

「はい」

すぐに男の人の声が応える。
あたしはちょっと息を吸うと、インターフォンに向かって言った。

「こんにちはー。今日からお世話になる梶原ですー」

「…開ける」

ひとことそう言うと、ぷつっと回線が切れる。

しばらくソワソワしながら待っていると、ぎいとドアがきしむ音とともに、背の高い男の人が出迎えてくれた。

背はあたしが見上げなければいけないほど高い。少し短めに整えられた髪は揺るやかにウエーブしていて、すっと切れ長の瞳に黒ぶち眼鏡がよく似合う。とてもキレイな顔をしていた。

「あのっ、今日からお世話になります。梶原芽衣子といいます」

「……」

「あの…」

「……」

「……」

なに、この沈黙。
しかもものすごい凝視されてるんですけど。ものっそい気まずいんですけど。

「葉流(はる)。よろしく」

「え、あ。はい、よろしくおねがいします」

自己紹介…なの?
うう、会話のテンポが掴みづらい。

「入って」

「は、はい、ありがとうございます」

よかった。追い返されるわけじゃないみたい。
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