メイド in Trouble!!!

「よし。できた!」

出来上がった料理を目の前にして、あたしは満足げにつぶやく。

本当に家政婦なんて勤まるのかと、最初は不安だったけど、なんてことはない。梶原家でやってたことを、そのままここでやるだけでよかった。

何もかもが広いから、掃除は大変だけどね。

「ん、いいにおい」

葉流さんが、ダイニングルームにやってきた。

「もうすぐ準備できますよ。お口に合うかわからないですけど…」

「うまそう」

相変わらず無表情だけど、興味津々に食卓を眺める葉流さんを見て、ちょっとほっとする。

お世辞でも、そう言ってくれると嬉しいな。

『ピンポーン』

不意に玄関のチャイムが鳴る。

「帰ってきた」

「あ、あたし開けにいきますよ」

そう言って割烹着のすそで手を拭うと、玄関へ向かう。
重厚なドアの鍵をかちゃりと開けて、扉を開けると……

「おっす、ペチャパイ!」

「メイコちゃん!!!!」

そこにいたのは、昼間のクソ王子様とセクハラ大魔神だった。

って、ええええええぇえええええぇぇぇ?!なんで?!!

「会いたかったよーメイコちゃん!!」

大げさな仕草であたしに抱きつくセクハラ大魔神。
またかい。顔が近いっての!!

「な、なんであなたたちがここに…」

「だって、俺の家だし。言わなかったっけ?」

クソ王子様がさもつまらなさそうに言い放つ。いいえ、全く存じ上げておりませんが。

というか、その事実を一切受け入れたくないのですが。

「紹介する。次男の亜紀と、三男の玲央」

葉流さんから、決定的な言葉が発せられる。

この二人が本日からおつとめする神宮司家の方々だったなんて。

「今日からずーっと一緒だね、メイコちゃん!」

「せいぜい馬車馬のように働けよ、ペチャパイ」

「ははっ……」

もう乾いた笑いしか出てこなかった。

「あとは悠宇だけか」

そうか、神宮寺家は4人兄弟だっけ。
まだ帰ってきてないのは末っ子一人だけだけど…どんな子なんだろう。ゆう、って名前からして、女の子かしら。

せめて、末っ子だけでも素直で可愛くて優しい、いい子だといいな…。

「ただいま」

「おかえ…り、なさい」

甘い期待を粉々に打ち砕くかのように、その子は現れた。

「メイコちゃん、これが末っ子の悠宇(ゆう)だよ」

そこに居たのは…あの、帰り道の、援交美少年だった。
< 15 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop