メイド in Trouble!!!
「よし。できた!」
出来上がった料理を目の前にして、あたしは満足げにつぶやく。
本当に家政婦なんて勤まるのかと、最初は不安だったけど、なんてことはない。梶原家でやってたことを、そのままここでやるだけでよかった。
何もかもが広いから、掃除は大変だけどね。
「ん、いいにおい」
葉流さんが、ダイニングルームにやってきた。
「もうすぐ準備できますよ。お口に合うかわからないですけど…」
「うまそう」
相変わらず無表情だけど、興味津々に食卓を眺める葉流さんを見て、ちょっとほっとする。
お世辞でも、そう言ってくれると嬉しいな。
『ピンポーン』
不意に玄関のチャイムが鳴る。
「帰ってきた」
「あ、あたし開けにいきますよ」
そう言って割烹着のすそで手を拭うと、玄関へ向かう。
重厚なドアの鍵をかちゃりと開けて、扉を開けると……
「おっす、ペチャパイ!」
「メイコちゃん!!!!」
そこにいたのは、昼間のクソ王子様とセクハラ大魔神だった。
って、ええええええぇえええええぇぇぇ?!なんで?!!
「会いたかったよーメイコちゃん!!」
大げさな仕草であたしに抱きつくセクハラ大魔神。
またかい。顔が近いっての!!
「な、なんであなたたちがここに…」
「だって、俺の家だし。言わなかったっけ?」
クソ王子様がさもつまらなさそうに言い放つ。いいえ、全く存じ上げておりませんが。
というか、その事実を一切受け入れたくないのですが。
「紹介する。次男の亜紀と、三男の玲央」
葉流さんから、決定的な言葉が発せられる。
この二人が本日からおつとめする神宮司家の方々だったなんて。
「今日からずーっと一緒だね、メイコちゃん!」
「せいぜい馬車馬のように働けよ、ペチャパイ」
「ははっ……」
もう乾いた笑いしか出てこなかった。
「あとは悠宇だけか」
そうか、神宮寺家は4人兄弟だっけ。
まだ帰ってきてないのは末っ子一人だけだけど…どんな子なんだろう。ゆう、って名前からして、女の子かしら。
せめて、末っ子だけでも素直で可愛くて優しい、いい子だといいな…。
「ただいま」
「おかえ…り、なさい」
甘い期待を粉々に打ち砕くかのように、その子は現れた。
「メイコちゃん、これが末っ子の悠宇(ゆう)だよ」
そこに居たのは…あの、帰り道の、援交美少年だった。