メイド in Trouble!!!
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「メイコ?…メイコってば」

「…は…はい?」

「いや、はいじゃないから。気は確か?」

あまりの疲労感から、授業に全く身の入らなかったあたしは、午前中をぼーっとしたまま過ごし。気がつけば、お昼休みになっていたようだ。

つ、疲れた。でも、ここ2日の間で、授業中が一番心安らげた気がする。

「おひる…たべよ」

そうつぶやいて、サチの席へ向かおうとしたそのとき。

「おい!ペチャ子!」

あたしを呼ぶ、その声に軽くめまいを覚える。

「れ、れおさ、ま…何故」

「何故、ってそりゃ、メシの時間だ」

いや、それはわかりますが。

あたしが聞きたいのは、そのメシの時間に何故あたしの目の前に現れるのか、ということでして。お弁当なら、今朝こしらえたのをお渡ししましたよね?

「どうぞ、ご自分の教室でお召し上がりください」

「何言ってんだ。昼飯の世話をするのも、お前の仕事だろ?」

な、なんですと…


―――――

「おい、お茶」

「ハイ、かしこまりました」

水筒から暖かいお茶を注ぎ、かいがいしく玲央さまにお茶を差し出す。

結局、玲央さまの突然のお申し付けに逆らうに逆らえず。あたしは屋上で玲央さまとランチタイムを過ごす事になった。

数メートル先には、やっぱり玲央さまのお取り巻き集団。近づくな、と一喝してくれたおかげで、取り巻きの女の子たちは、ある程度あたしたちと距離をとっては居るけど。むしろ遠巻きにこちら凝視しているせいで、普段より数倍は禍々しい気がしないでもない。

お昼休みくらいは…のんびりしたかったのに。彼女らの視線が怖くて…ご飯が喉を通りません、玲央さま。

「ん、うまいな、この卵焼き」

「あ、そうですか。それは…ようござんしたね」

あたしは疲れきった顔で言う。

「…なんだよ、気持ちわりぃ。普通にしてろよ」

あたしの後頭部を力一杯小突く玲央さま。痛い。思いっきり殴っただろ、こいつ。

しかし頭より何より、周囲の禍々しい視線がすごくイタい。これが普通にできる状況かっての。
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