メイド in Trouble!!!
「…ほんとに気持ちわりーくらい元気ねぇな?熱でもあんのか」
少し眉を寄せて、あたしの顔を覗き込んだ。
「え、」
その距離は、わずか数十センチ。人形のように端正な顔が、目と鼻の先にあった。
顔が、近い。
その顔は、今まで見た事ない。心配、といった表情だった。
「…大丈夫。ちょっと疲れただけ」
あたしは目を合わすことができなくて、ちょっと戸惑いながら言う。
原因、と言えばずばり、あなたの後ろの禍々しいオーラ、なんですけどね。玲央さまがあたしの顔を覗き込んだ瞬間、どす黒いオーラが三割増になりましたから。
まあ、それはあえて口にしないけど。聞いてそうで怖いから。
「まー、無理もねぇか。いきなり生活する環境が変わったんだしな」
玲央さまはあたしから少し離れると、ふっとため息をつきながら笑った。その笑顔が、なんかちょっと優しい気がして…胸の辺りがむずむずする。
「んー、まあね」
あたしはどうしていいかわからなくて、曖昧な返事をして唐揚げを口に放り込む。
「気楽にやればいいんじゃねーの?」
憂鬱の元凶、邪悪な集団を背にしたあんたには言われたくないんだけどね。
でも、なんか。こういう風に優しく言われると、なんというか、落ち着かないというか。カユい。
「あんたが人の心配とか…気持ち悪」
「あ?なんだと?もういっぺん言ってみろ」
思わずこぼれた言葉に、こめかみに青筋をたてながら玲央さまが言う。
「心配しないでよ、なんか調子狂うから」
「誰がオメーの心配なんぞするか!このちんくしゃが。テメーは死ぬ気で俺のメシ作ってりゃいーんだよ、バカ」
「…このクソ王子」
れおさまに聞こえないように悪態をつきながらも…心底ムカつく憎まれ口に、何故かほっとしてしまうあたしなのだった。