メイド in Trouble!!!

「…ほんとに気持ちわりーくらい元気ねぇな?熱でもあんのか」

少し眉を寄せて、あたしの顔を覗き込んだ。

「え、」

その距離は、わずか数十センチ。人形のように端正な顔が、目と鼻の先にあった。

顔が、近い。

その顔は、今まで見た事ない。心配、といった表情だった。

「…大丈夫。ちょっと疲れただけ」

あたしは目を合わすことができなくて、ちょっと戸惑いながら言う。

原因、と言えばずばり、あなたの後ろの禍々しいオーラ、なんですけどね。玲央さまがあたしの顔を覗き込んだ瞬間、どす黒いオーラが三割増になりましたから。

まあ、それはあえて口にしないけど。聞いてそうで怖いから。

「まー、無理もねぇか。いきなり生活する環境が変わったんだしな」

玲央さまはあたしから少し離れると、ふっとため息をつきながら笑った。その笑顔が、なんかちょっと優しい気がして…胸の辺りがむずむずする。

「んー、まあね」

あたしはどうしていいかわからなくて、曖昧な返事をして唐揚げを口に放り込む。

「気楽にやればいいんじゃねーの?」

憂鬱の元凶、邪悪な集団を背にしたあんたには言われたくないんだけどね。

でも、なんか。こういう風に優しく言われると、なんというか、落ち着かないというか。カユい。

「あんたが人の心配とか…気持ち悪」

「あ?なんだと?もういっぺん言ってみろ」

思わずこぼれた言葉に、こめかみに青筋をたてながら玲央さまが言う。

「心配しないでよ、なんか調子狂うから」

「誰がオメーの心配なんぞするか!このちんくしゃが。テメーは死ぬ気で俺のメシ作ってりゃいーんだよ、バカ」

「…このクソ王子」

れおさまに聞こえないように悪態をつきながらも…心底ムカつく憎まれ口に、何故かほっとしてしまうあたしなのだった。
< 27 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop