メイド in Trouble!!!

猛獣使いではありません。

ーーーーーー

「あ、ペチャ子。葉流兄、今日はサークルの飲み会だから遅くなるってさ」

朝の食卓。朝食の塩鮭を頬張りながら玲央さまが言った。葉流さんは講義が早いとかで、朝ごはんも食べずに早々家を出て行ってしまっていた。

「あ、そう。了解」

あたしは軽くそう答えたのだけど、玲央さまの一言で、食卓の空気がふいに緊張に包まれた。

「……」

「……」

「ど、どうしたの?二人とも」

ごはんを口に運ぶ手をぴたりと止め、固まったままの亜紀さんと悠宇くんに、ただならぬ雰囲気を覚えながら問いかける。

「おい、玲央。今日は葉流兄は車で行ったのか?」

「ん?いや、電車で行ったけど?今日は飲んで帰るらしいから」

そう答える玲央さまの言葉が終わるや否や、二人は私の方に向き直り、必死の形相で言った。

「芽衣子さん、…今晩は玄関にチェーンと南京錠かけておいて!!」

「メイコちゃん。今日こそ一緒に寝ようか?ね?ね?じゃないと君が危ないから!!」

「え、ちょ、二人とも急に何ですか…」

葉流さんが飲み会に行く、ただそれだけのコトなのに、この二人の異様な怯えようは一体…。あたしは訳が分からず、二人に問いかけるのだけど、二人はぶるぶると怯えたままで何も語ろうとはしない。

ただ一人、平然とした顔でごはんを頬張る玲央さまに、視線でどういうことなの?と問いかけてみるものの。

「俺、大体葉流兄が帰ってくる時間には寝てるから、シラネ」

全く役に立たなかったのだった。

「メイコちゃん、葉流兄はね、すーんごく酒癖が悪いんだ」

「ああ、なんだ。そんなことですか。うちのお兄もお酒飲むと、笑うわ泣くわ絡んでくるわでだらしなくなっちゃうんで、慣れてますよ?」

「いや、そういう可愛らしいレベルじゃないんだ。とにかく、今日は部屋にこもって鍵をかけておいた方がいい」

あまりにも必死に説得されたものだから、あたしはとりあえずうなずくことしか出来なかった。
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