猫とボク。
 「うぎゃーっ!」
「タマっ、じっとして!」

――フシャーッ

「あだだだだだ、ごめん、ごめん、もうやめるから!」
 タマの爪を切ろうとしたけど、激しい抵抗にあって、ボクの手は傷だらけになってしまった。
 いや、手どころか、ほっぺたにも……。
「フンッ!」
 ボクの膝から飛び降りて、部屋の隅に飛んでいったタマは警戒心丸出しで。
 手を伸ばせば、ずるずると後ずさり。
「……アゲハなんて嫌いだ」
「ッ……タマーっ……!」
「ケッ、オレはタマじゃねぇやい! ステファン一九八一世だ。わかったか!」

 ……ねぇ、聞いた?
 今、タマが嫌いって言った……。
 はっきり、そう言ったよね。
 もしかして、ボク、タマに嫌われた!?

 「……たまぁ……嫌っちゃイヤだぁ……」
「だからっ、ステファンだっての!」
 ボクはタマの身体を捕まえようと飛びついて。
 反射的に飛びのいたタマに顔面を蹴飛ばされた。
 そんなに、嫌いなの!?
 う、ショックだよー。
「おい! 猫の蹴りくらいかわせよ、アゲハ! おーい、アゲハー……」
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