猫とボク。
 既に日差しが傾いているとはいえ、まだ外は暑くて、じわりと汗がにじむ。

 徳用鰹節が売られているスーパーまでは、徒歩10分。
 チャリで行くか歩きで行くかで迷っていたら、タマの声がした。
「アゲハ、あの鰹節より、ゴージャスパックの方がいいー」
「……え?」
 二階の、ボクの部屋の窓から顔だけだして、叫んでいるらしい。
 ボクが唖然としていたら、父さんが顔を出してタマを抱き上げた。
「おーい、アゲハ。タマが見送ってくれてるぞ。よかったなー」
 ……うん、そうだね……。
「って、父さん、またボクの部屋勝手に入って!」
「ついでに父さんのビールとするめも買ってきてくれ~」
「えーっ! ビールって重いんだもん! ヤダーっ」
 その父さんの言葉に素早く反応したタマが、我も我もと鳴き声を上げた。
「するめ! オレも食いたいぞっ! 買ってきて!」
「な、いいだろ、アゲハ、ビールとするめ!」
「おねがい、アゲハ! ゴージャスパックとするめ!」

 タマがそう言うなら……。
「わかった! 鰹のゴージャスパックと、するめと、ビール、買って来るよ!」
 ボクはチャリに飛び乗り、一駅向こうのスーパーまで行くことにした。
 鰹のゴージャスパック、そこにしか売ってないからね……。
 ビールが多少温くなるけど、ま、それはたいした問題じゃない。
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