猫とボク。
 真夜中の自分の家を。
 ひたひたと歩くタマの後ろを、よたよたとついて歩くボク。
 三歩歩くごとに欠伸をしている気がする。
 それにしても、なんだか、自分の家じゃないみたいだ。

 「ふ、ふわぁ……」
「アゲハ、しっかりしてよ」
「眠いんだってば……」
 2時間おきに起きてるんだぞ、ボクは。
「ね、おやつちょーだいっ!」
 そう言ってえさ箱の前にとことこ歩いていき、前足をそろえて腰を落として、お座り。

 とってもお行儀が良い。
 そして、暗闇の中でも、期待に満ちた目がキラッキラ輝いているのがわかる。
「鰹節でいい?」
「えー……貝柱がいいな」
「うっ」
 面倒なこと言うなよとぼやきつつも、ボクは閉じそうになる瞼を叱責しながら冷蔵庫のドアを開けた。
 オレンジの光が、目に刺さって眩しい。
「……カニカマは?」
「じゃあ、カニカマスペシャルがいいな」
 なんと贅沢な!
「あ、ないや。夕食のサラダに出たもんね。じゃあ、ちくわは?」
「やだー。ホタテの貝柱がいい。一つでいいからさぁ……ゆでてよう」
「なんと我儘な……」
 お願い、と、喉をゴロゴロならしながらスリスリされて、人懐っこく甘えられては。
「くっ……ひとかけらだけ、だからね」
 きっと、健康にもよくないしね。
「わーい!」
 ボクの、完敗。
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