猫とボク。
 が、気紛れなタマのこと、すぐどこかへ行っちゃう。

 「こらタマーっ! そこの壁で爪研ぐの、禁止だってばーっ」
「げっ」
「何遍言ったらわかるのさっ」
 ぴゅーっと逃げ出すタマと、それを追いかけるボク。
「なんだかタマちゃんとアゲハ、会話が成立してるように聞こえるからおもしろいわよね」
「そーなんだよね。アゲハにだけ、タマはお返事するし」
「いいわねぇ、仲良しで」
「タマ、実は人間語理解してんじゃないの?」
 母さんとタテハの、その何気ない会話でボクとタマはギクッとした。
 二人で慌ててボクの部屋へ飛び込み、顔を見合わせた。

 「びびび、びっくりしたね、アゲハ……」
「うん……」
「これじゃ、うっかりリビングで会話できないなぁ」
「そーだね……気をつけないとね」
 つるん、と頭を撫でてやれば、何か言いたげな目が、ボクを見詰める。
「どした?」
「んーん、リビングで会話できないのは寂しい生活に逆戻りしちゃうんだと思ってさ」
「寂しい?」
「うん……みんな会話してるのに、おれだけ仲間に入れない。最近はなんとなく皆と喋ってる気になってたからさ……」
 ま、仲間に入れないのが普通なんだけどさ、と、尻尾をゆるく左右に振る。
「タマ……」
「いいの、気にしないで、アゲハ」
 いや、気になるってば!
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