猫とボク。
 ボクは、タマを膝に抱き上げて、暫らく考えた。
 珍しく大人しくしているタマも、何かを考えていた。

 時計の秒針が、たっぷり5周はした後。
「タマ、普通にリビングで会話しよう。ボク、さりげなく皆に通訳するから」
「え、いいの? アゲハが白い目で見られたり、変な子だっていわれたりするかもしれないんだよ?」
「大丈夫、うちの家族はそんなこと思ったりしないよ。知ってるだろ?」
「ニャ……」
 タマが、ボクの手にグリグリと頭をこすり付けてきた。どうやら、甘えているらしい。
「よしよし、タマ」
「アゲハー……」

 タマを抱っこしてリビングへ行くと、父さんが新聞をひろげていた。
「おお、なんだ。タマ、アゲハと最近仲良しだな」
「へへ、いいでしょー」
「タマ、父さんのこと、嫌いか~?」
「にーあ(そんなことないよ、大好きよ~)」
 ボクの腕の中から、ひょいと父さんの膝の上に飛び移ったタマ。
「おお、嫌われてないってことか!」
「にゃん」
 会話が成立した、と、喜ぶ父さんとタマを見ていたら。
 ボクもなんだか嬉しくなった。
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