猫とボク。
 結果から先に言うと。
 二十歳になった日の朝。
 ボクは念願の特殊能力を手に入れました。

 なんと、猫の言葉が理解できるようになったのです――。

 「いやぁ驚きだぜ、猫語の解る人間が出るとはな。けっ、面白くなってきたな」
 ボクだってびっくりだ。
 こんなに可愛いタマが、こんなに柄が悪かったなんて。
「あ、アゲハ。オレね、ちゃんと母上が生まれたときにつけてくれた名前があんのよ」
「う、うん」
「ネコの本名ってのは、特別なやつにしか言っちゃいけないんだが、お前はある意味特別だから、教えてやる」
 ありがたく思え……いや、そういわれてもねぇ……。

 ベッドに正座したボクの膝に上り、肉球でボクのほっぺたをふにふにとつつきながらタマが言った。
「白衛門・タマ・ユリウス・ジョナサン・ファン・藤・ロビンソン・ジャック・アントン・マリー・ヴィクトール・ステファン……」
 ボクは慌てた。長くないか?
「ま、まってまって」
「ん?」
「長くない?」
「ああ、人間よりは少し長いな」

 ねぇ、少しじゃないよ……ソレ。
 ごめんねタマ、ボク、そんな長い名前覚えられないよ……。
「あぁん?」
 だからっ、ごめんってばぁ。
< 3 / 60 >

この作品をシェア

pagetop