猫とボク。
春だからなの!?
 ジジとタマのにらみ合いは、呆気なく勝負がついた。
「うぐるにゃーっ(出てけっ!)」
 唸り声を発して今にも飛びかからんばかりのタマに対してジジは。
「にぁ~ん……(ごめんなさい……)」
 耳を伏せと尻尾を丸めて小さくなっちゃった。
「見たか、アゲハ!」
 鼻息荒く得意気なタマはさておき。

 ボクはジジに興味をそそられた。
 タマより小さい体。毛が多少痛んでるのは野良だからかなぁ……。
「……なんだかなぁ」
「なんだい、アゲハ?」
 屈んでジジに手を伸ばしたら、明らかに怯えて、ずるずると後ずさる姿はなんとも憐れで。

 「タマがジジをいじめてるように見えるんだよねぇ……」
「な、なんで?」
「か弱い女の子を威嚇するなんて……」
 うん? と、タマとジジが首をかしげてボクを見上げた。
 かっ、可愛い……。
 
 いや、それはさておき。
「猫の王家の血を引く、ステファンがそんな弱いもの苛め、していいの?」
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