猫とボク。
 なんのことかな、と、ワザとそっぽ向くタマ。
 けど、時に口より雄弁な尻尾がね。
「じたばたしてるよ、尻尾が」
 柔らかい尻尾をするん、と撫でてみたら、ふと、ジジが尻尾にジャレていたのを思い出す。
「タマ。何か言いたいことあるんでしょ」
「う……うん」
 忙しなく顔を洗ったタマは、腰をおとして前足を揃え、首を少しかしげた姿勢のままボクをじっと見詰めた。
「アゲハ」
「なんだい?」

 タマが、ひょいとボクの膝に飛び乗ってきた。
 後足で伸び上がり、ボクの肩に前足を掛けて。
「オレは猫だから……猫しか選べない。でもアゲハのことも、タテハも、父さんも母上様も、みんなみんな、大好きなんだ」
「うん、知ってるよ」
 タマはボクの耳元で小さく呟いた。
「オレ、この家に居てもいいのかな?」
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